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イベント報告

第1回がん相談支援センター相談員研修会「がん相談の始めの一歩」

2014年6月15日開催

第1回がん相談支援センター相談員研修会「がん相談の始めの一歩」

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第1回がん相談支援センター相談員研修会

「がん相談の始めの一歩」実施報告

2014年6月15日開催

 

実施報告書のまとめ

報告者   : 徳島大学病院がん診療連携センター がん緩和・こころのケア部門 担当者

開催日時 : 2014年6月15日(日)10:00~11:30 (9:30開場)

開催場所 : 日亜メディカルホール(徳島大学病院西病棟11階)

参加者    : 55名(医療従事者対象,および,若干名のピアサポーターや患者会代表)

講師        : 大松重宏先生   

                     (兵庫医科大学准教授,元国立がんセンター中央病院相談支援センターがん専門相談員)

 

研修内容

がんと言われた患者さんやご家族の多くは,がん罹患のショックに続き,治療しながらの生活や仕事,経済的なことなど,たちまち,大きな悩みをかかえることになる.そのような『さまざまな困りごと』を相談できるのが各医療機関の相談窓口で,がん専門相談員としてソーシャルワーカーや相談看護師など専門スタッフが対応している.第1回目は「がん相談の始めの一歩」と題し,相談支援センターの業務やがん相談員の役割など相談支援の基本について『基礎固め』の研修を行った.

 マスメディアで話題になった最新の治療法や遺伝相談,および,講師の体験をもとにして相談内容を想定し,対応方法を考えた.相談支援の目標は,相談者のニーズを明確化し,的確な情報提供や心理社会的支援を行うことで当事者の行動化や意思決定を支えていくことである.相談者から実際に語られることの奥に別のニーズが潜んでいたり,誤った理解のまま相談に来られている場合もある.事例を正確に把握し真のニーズを探りながら問題解決・改善に努めることが求められるが,評価や先入観無しに相談者を受けとめ,支持的に対応することが基本であることを再確認した.

がん相談員の役割は,「科学的根拠とがん専門相談員の実践に基づく信頼できる情報提供を行うことによって,その人らしい生活や治療選択ができるよう支援すること」であるが,そのためには療養生活上のさまざまな問題について積極的に支援できるよう,相談員の資質や専門性の維持向上が継続的に行われる必要がある.より良い「がん相談支援」とは,「医学的根拠と実践に基づく情報を駆使し,自己決定のプロセスに伴走すること」であり,「相談支援に携わる多職種同士が連携して問題解決をめざし,生活全体のケアを提供する専門技術」なのである.

しかし,相談支援活動を行う際に,自分の所属する組織に重点をおきすぎると,患者さんやご家族の相談支援は固定化・形骸化し,相談者へのメリットは限られてくる.クライエント(相談に来る人)に感情移入しすぎたり,あるいは,相談員自身の専門性ばかりに拘ると,問題を見誤ったり独りよがりの対応になりかねない.相談者・組織・専門性の3つの要素をバランスよく保ちながら問題理解,解決・改善を図っていくことが大切とのことであった.

会場からいくつかの意見や質問があった.相談支援員は患者さん・ご家族と医療者をつなぐ役割として大きく貢献しており診療に欠かせない存在であるが,相談員のサポートをどのように進めていったらいいのか,相談技術や資質のブラッシュアップのためにはどのようなしくみが必要なのかなど,いくつかの質問やご意見をいただいた.大松先生から,相談員をサポートする仕組みは是非必要なこと,相談業務を支え,スーパーバイズやアドバイスしてくれる専門的な場が望まれるとのお応えをいただき,ご自身を支えてくれているのは,病院で自分を利用してくれる医師や看護師からの感謝や励ましなどのフィードバックであり,何より心強いのは,いつも叱ってくれ応援してくれている患者会であるとのことであった.  

県行政担当者からは,今後増加していく在宅医療を支えていくために病院と地域との連携を強め,いろいろな年代層や家族メンバーの支えあいを充実させていきたいとの方針が披露された.大松先生から,住んでいる地域でのたまり場や気軽に集まれるところが自然発生的に生まれ,そこにヘルパーさんなど専門技術をもった支援者が加わり,患者さんやご家族が自分たちの地域でお互いに見守れるしくみが出来てくるといいとの助言があり,実際にいくつかの地域で既にそのような取り組みが始まっていると紹介された.

以上のように,相談業務に携わる医療職の方々を対象にイントロダクションとも位置づけられる第1回目の相談員研修を終えた.

 

午後は,引き続き同会場で,県内患者会のNPO法人AWAがん対策募金・ガンフレンド主催により,患者さん,ご家族,医療者,行政担当者などさまざまな方々を対象に,「相談支援センターと患者会とピアサポーターによる患者支援のありかた」というタイトルで,フリートークが行われた(13:00~16:00,約70名参加).患者さんやご家族,県内4がん診療連携拠点病院の相談員が意見交換し,会場からも活発な発言が続いた.

まず,大松重宏先生から「がん相談支援の現場から」というタイトルでお話があった.国立がんセンター中央病院(当時)がん相談支援員時代の経験をもとに,実際に相談支援員が機能し役立っている様子がいくつかのエピソードとともに報告された.続いて,徳島がん対策センター副センター長八木淑之先生(県立中央病院)から「県内がん診療連携拠点病院における相談支援」について現状報告があった. 

休憩後,寺嶋吉保先生(県立中央病院)とガンフレンド代表勢井さんの進行で,県内4拠点病院相談員,患者さん,ピアサポーターの方々が同じテーブルを囲み,相談支援の実情や利用者からの意見・要望について検討しあった.

会場からも患者さんやご家族から発言が続き,行政としての方針説明,県外参加者から参考事例紹介などが述べられるなど,『望ましい相談支援』とは何かをテーマに,オープンで率直な雰囲気のなか話し合いが進められた.

最後は主催の患者会代表からの挨拶で,「相談支援センターをもっと知ってもらい,もっと利用してほしいとの思いからこのような企画が生まれた.相談窓口の存在がもっと周知されるようにそれぞれの立場で一層努力していきたい」との言葉で締めくくられた. 

 

以上のように,がん相談支援のあり方について,午前は徳島がん対策センター・徳島大学病院がん診療連携センターにより実務者向けに,午後は患者会主催で患者さんと医療者が向き合う形で,『利用者にとって望ましいがん相談支援』を探る試みが終日行われた.当事者双方と病院関係者がお互いに顔を見ながら胸襟を開いて話し合い,そこに行政担当者,マスコミ関係,県外参加の方々も加わり,それぞれの立場から真摯に模索する取り組みは全国的にも珍しく,意義深いとのことであった.

ふだん聞けないような相談員の苦労話が披露されたり,患者さん・ご家族の率直な話を聞くことができたりなど,お互いについての気づきや意思疎通,相互理解が促進されたと思われる.がんとともに社会生活を営んでいくうえで相談支援センターの役割は大きく,あらためて,相談窓口の周知と相談員の資質の維持向上が喫緊の課題であることが参加者みなに共有された(了解を得て,主催者に代わり午後の会も報告いたします).

 

大松重宏先生プロフィール

1983年関西学院大社会学部卒。2008年ルーテル学院大学院総合人間学科研究科博士前期課程修了。

1983年から神経難病等の医療分野でソーシャルワーカーとして勤務。98年から国立がん研究センター中央病院に転じ,社会福祉の視点からがん患者やその家族の相談支援に携わる。同がん対策情報センターを経て,現在は兵庫医科大学社会福祉学で医師の養成の傍ら,がん患者のセルフヘルプグループ,ピアサポートについて研究し、その研究結果を医療従事者だけではなく、がん患者会、がんサロン等に報告し、ピアサポートのあり方について啓発している。社会福祉士,精神保健福祉士,介護支援専門員。

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